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2013年09月12日(木)

少女

こんにちは。大野秀樹です。以前にもご報告しましたが、来週の19日をもってジェイズを辞めることになっていますので、このようにして文章を書くのも、もしかすると今日が最後になるかもしれませんが、最後の日になんとかご挨拶は書こうと思っていますので、今日は普通に書こうと思います。

先日といいますか、ここ最近の出来事です。僕がよく利用する駅で、夜10時頃通りかかるといつ頃からか、ある少女がギターで歌を歌うようになっていました。利用する日や通りかかった日には必ず歌っていましたので、恐らく彼女は毎日のようにそこで歌っていたのだと思います。特に素晴らしく上手とかいうのではありません。それに、最初、旋律がいいなと思って足を止めて聴くこともありましたが、恐らく曲は実際に他の誰かが歌っている曲だろう事もわかりましたので、そういう才能があるということでもないのだと思います。

しかし、彼女は少女という表現が相応しいくらいの若さで、それでいて少し大人びた感性を持っていて、ですからよくそういう人は、とても傷つき易く、周りには中々馴染めず、故に純心。純心で傷つくのが嫌な人は、よくそれを捨てて、誤魔化したり、迎合したりしてしまいますが、彼女は声の響き中にも、佇まいの中にもその純心をもっていました。

ですから、誰ということもなく、近くで誰かと待ち合わせている人達、家路へそこを通り過ぎる人達、本当に足を止めてしまう人達、それぞれがその純心の聴こえる分だけ、思い思いその歌声に、特に聴くということもなく、耳を傾けているような感じでした。

純心というのは、意識を超えて、こころの深い場所まで届く波長を持っているものです。

よく純心を持っている人程、それが何かが分かり、それが鼻につくひとから攻撃を受けてしまうということがあります。

ある日、今まで誰もそこで演奏をするなどということは、僕の知る限りなかったのですが、すぐ隣で演奏を始めた人がいました。三人で、しかも、アンプとスピーカーのエレキギターで。

彼女の声は掻き消されそうになっていました。それでも純心の含まれた声はところどころに力強く響いてきます。このときはさすがに、心ある人たちは幾人か彼女の前に集まっていましたし、僕も思わず飲み物を買いに行って彼女に手渡したりして、応援する雰囲気が勝っていました。

また、別の日に、大変に驚いたことに、違う人なのですが、彼女がいつも演奏しているまさにその場所で演奏をしていました。

さすがに、その日、彼女の姿はありませんでした。

そして、残念なことに、僕はそれ以来彼女の姿を見ていません。

駅には、もう誰も演奏しようという人は居らず、何事もなかったように駅として利用する人達だけがいるだけです。

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